2004年09月16日

四国 歩き遍路 2日目

歩き遍路 2日目

2日目 表紙

6番札所「安楽寺」 − 11番札所「藤井寺」
(納経は間に合わず)

合計21.3km歩行

痛い足を引きずりながら半ば強引に歩いた。
本当の辛さを実感、そして人の優しさを痛感した日。

7月3日(土) 快晴 酷暑

AM4:30 起床

あんなに疲れた一日だったのに朝日が昇ると同時に起きてしまった。
鐘付堂の窓の格子越しに朝日を望む。
昨日はおじさんといろんな話をして、いつの間に寝てしまった。
途中、あまりにも蚊の攻撃がすごくて蚊取り線香をつけたのが夜中12時。

私はウレタンマットレスと寝袋代わりに持っていったシーツのありがたみ・実力を実感した。
かさばるけれど、これらが有ると無いとでは雲泥の差。
やはり人間一番必要なものは寝ること・食べること・トイレの3つ。
これをないがしろにしてはいけない。
マットのおかげで寝てても背中が痛くなかったし
シーツのおかげである程度虫からの攻撃を防げた。
精神的にもひとりの空間ができて安心するし。

AM4:30。早いのでおじさんはまだ寝ている。
起こさないようにそーっとひとり階段を下りる。
一歩一歩踏み出す度に激痛が走る。
境内にある自販機でポカリスエットを購入。
扉のまだ閉まっている本堂の階段に座り、ゴクリ。
(その前にちゃんとご挨拶しときました)

寺はシーンとしている。
お掃除のザッザッというほうきの音。池の水の音。
新聞配達のバイクの音。風が木々を揺らす音くらいしか聞こえない。
「お寺ってこんな落ち着くとこだったんだ・・・」
大人になって初めて気がつくなんて、もったいなかったな。

しばしボーっとしていると、おじさんも起きて下に降りてきた。
おじさんは野宿アイテムを一切持っていなかったのであまり眠れなかった模様。
「背中は痛いし、蚊がすごくて寝られんかった。持ってきたキンカン、一晩で半分使ったぞ」
確かに密閉された部屋でなかったからねぇ。
でも私はある程度は覚悟してたのでそれ程しんどいとは思わなかった。

鐘付堂に戻って荷支度。そして足のマメをチェック。・・・うわぁ。
自分の足ながら、ひどすぎる。
指のつけ根部分が見事にマメだらけ。
というか、水風船をつけてるみたい。(読んでてウェッてなったらごめんなさい)
ここで私は人生初めてのマメ治療をすることにした。
そう。針でこのマメを刺して水を出すのである。
自分で自分を刺すなんて!怖すぎる。
オキシドールで消毒した針を恐る恐る刺してみる。
深さが足りないのか、水がでない。
仕方ないからチョンチョン・・・まだダメ?・・・ブスブス。あ、ようやく出た。
そこをまた消毒。ずっと激痛が続く。い、痛いよぅ(涙)
水を出し切ったとこでテーピング。
結局治療しても痛いのは変わらなかった。

AM6:30 6番札所「安楽寺」 出発。

のんびりペースで進む。というか、もう普通に歩くことが出来なかった。
でも早朝はまだはんなりと涼しいし、朝独特の静けさがあり歩いていて楽しかった。
次の7番札所はさほど遠くない。まっすぐ一本道を歩いていく。

6-7蝶

途中、羽化したての黒い蝶々を発見。羽がまだしっとりしていて美しい。

AM7:00前 7番札所「十楽寺」 到着。

納経は7時からなのでそれまでしばしの間休憩する。
私は買ったばかりの納め札に名前を書き溜めすることにした。
いちいちお寺に着いてから書くのが面倒だったのだ。
それを見たおじさん「え?いちいち名前書いとるん?」
私   「うん。だって名前書かないとお大師様が私が来たってこと分かんないじゃないですか」
おじさん「俺、何も書かないでポイポイ納札箱に入れとったわ」

びっくり。私的には「もったいない」気がした。せっかく来てるのに。
証拠?自己満足?よく分からないけど、
せっかくお遍路してるのに参拝をしない人くらいにもったいない気がしたのである。
そこんとこは人それぞれ考え方があるから強制も何もしないけどさ。

私は名前をひと通り書いたら、これから納めるお札の裏にメッセージを書き始めた。
「昨晩、夜道で父から借りてきたお数珠を落としました。
このお数珠は亡き祖父がわざわざ和歌山の高野山本山で
買い求めたものだったそうです。
本当にごめんなさい。」


そう。ポカをやっちゃったのである。
昨晩、お寺の近くの食堂で夕飯を済ませた帰り、真っ暗の田んぼ道を歩いた。
そこでどうやら私は落としてしまったようなのだ。
落としたことなんて全く気付かず、朝になって荷支度している最中に
「あれ!?数珠がない〜!」なんて。あぁ、大バカ。

丁重に懺悔をしてから、いつものお願い事というかお祈りをする。
お経は読めないけれど最後はしっかりと声を出して
「南無大師遍照金剛(なむだいし へんじょうこんごう)」と3回唱えてみた。
無宗教ではあるけれど、私の中でお大師様はだんだんと特別なものへと変わってきたようだ。

7時を過ぎて夏の太陽らしくなってきた。
これからの暑さ対策に頭に巻いていたバンダナを濡らす。
あまく絞って頭にまた巻きつける。少々水が垂れてくる方が気持ちよい。

AM8:20 8番札所「熊谷寺」 到着。

ここは立派なお寺だった。
なにせ入り口から本堂までが遠い遠い(泣)
ようやく着いたかと思いきや、中を延々と歩かされ階段地獄が待っていた。
私はそれを見ただけで卒倒しかけ、下の売店前のベンチにザックを置いていくことにした。
参拝セット(お線香とか入ったケース)、それと大事な金剛杖だけ持っていく。
まだ朝早いこともあり人がまばらでとても気持ちよい空間だった。
本堂よりも更に高台には不動堂もあったのだが、私の体力では無理とあきらめた。
参拝を済ませ、下の売店に戻る。この中に納経所はあるらしい。
自動ドアの中は・・・エアコンの効いた天国があった。
エアコンなんていつぶりだろ〜♪としばしの快感を味わう。
それから外のベンチで靴・靴下を脱ぎ休憩。
足のマメができる原因のひとつとして湿気があるらしい。
なので休憩時にはこまめに靴を脱ぎ乾燥させること、と聞いていた。
それからまたマメの水抜き。さっき抜いたばかりなのにまた沢山の水が出た。
「うひょー、すごーい」とだんだん水抜きに慣れて面白くなってきた私が声を出した。
かわいそうなのは同行してたおじさんである。
マイペースに休憩をされ、しかも目の前で痛々しいマメ治療を見せられるのである。
しかもやってる本人は笑顔。オカルトちっくだっただろうな。

途中、初めて自分と同年代らしい女性がやってきた。
その子は身なりもキチンとしてて汗もそんなかいておらず、しっかりした足取り。
自分の姿を比較してしまい、ちょっぴり恥ずかしかった。
なんか私ってば女捨ててるかも・・・。
でもこういう限界に挑戦してみたかったし、私は私。それでいいのだ。うんうん。

8-9

9番札所へ向かう道は新しい道らしく広々していて車も少なくとても快適に歩けた。
足は痛いけれど「歩いていて楽しい」のだ。
広がる田んぼに広がる空。とても牧歌的。

8-9牛

ときおりプゥ〜ンとある匂いがすると「あ、どっかに牛いるね」と牛舎探し。
体はきつくとも心に余裕がでてきたようだ。

AM10:00 9番札所「法輪寺」 到着。

9番札所

ここのお寺の門には大きなわらじが飾ってあった。
足の痛む私はそれを見てついつい「あ〜ありがたい」という気持ちになってしまう。
今日1日無事歩き通せますように、と祈りながらわらじに触れた。

門をくぐって左側にお清め処(水場)。右側にベンチ。
暑さにやられていた私はそこめがけて一目散だったのだが
ちょうどベンチに座っていたおじいさんに
「足痛いんだろう。ここに荷物を置いて行きなさい」と呼び止められた。
ありがたく荷物を預かってもらい、金剛杖に支えてもらって
本堂・大師堂と参拝を済ませた。
そしておじいさんのベンチまで戻って一休み。またマメのお手入れである。
それを見ていたおじいさんが
「消毒したら完全に足が乾燥するまで放っておかないといかん。
濡れていたらまたマメがすぐに出来るぞ。」とアドバイスしてくれた。
その通りにして裸足のまま休憩していると
突如「ワシの隣に座りなさい」とおじいさんが手招き。
私の足を見て「こんなになるまで歩きおって・・・」とマッサージをはじめた。
膝下を丹念に揉んでくれたのだ(しかも両足共に)。
すごく辛い時にこうしていろんな人から支ええられて
この旅は本当に「感謝」の気持ちを実感できる。

このおじいさんはご近所に住んでいるようで
話を聞くところによると毎日午前9時ごろからちょうど1時間きっかり
この寺のこのベンチで休憩をして帰るそうだ。
(そして昼食を済ませたらお昼寝も欠かさないらしい 笑)
なのでこのおじいさんは多くのお遍路さんと顔見知りだ。
私が一緒にいる間にも「おー、元気やったか」「満願したのか」と声をかけている。
もしかしたら名物おじさんなのかも。
するとおじさんの元にひとりの歩き遍路のお兄さんがやってきた。
外見、本当の修行僧っぽい。
荷物もさんや袋というお遍路用の白い斜めがけバッグだけ。
私と同行のおじさん、名物おじいさん、修行僧のお兄さんと4人で座ってしばし話をした。
その中でとても良い話が聞けた。

「人間の心について」--------------------------------------------------------------
人間は生まれた時、誰でもまん丸いキレイな形をした心をしているそうだ。
しかし生きていくにつれて、尖った垢がどんどんくっついていき
次第にデコボコになってしまう。
それをまた丸くキレイに磨き上げる行為=修行なのだそう。
そして修行をして徳を積んでいくんだって。

「お遍路について」--------------------------------------------------------------
おじいさんは私達にしきりに「悲しい気持ちでお遍路をしちゃいけないよ」と言っていた。
ご先祖の供養で回る方もいるだろう。
しかし悲しい気持ちでいたら何も新しいものは見えてこない。
逆に楽しい気分でいれば、お遍路中に些細な発見があって
小さな幸せがたくさん見つかるよ、というのだ。

これを聞いて「そう!その通りなの!」と心の中で叫んでしまった。
私がずっと思っていたことなんだ。
同じ時間を過ごすのならば悲しい気持ちで塞ぎこんでいるよりか
楽しい気分で過ごしたほうがいい。
現に私はお遍路中でいろんな出来事に出会ったし、いろんな発見もあった。
かわゆいニャンコを見つけたとか
太陽に照らされた青々と茂った葉がキレイだったとか
どんなに身体はキツくても、気持ちはとても晴れ晴れしていて
すごく楽しかったんだ。
これはお遍路だけでなく普段の生活でも言えることだと思う。
こういうことを考えていたのが私だけでないこと、
上手い具合におじいさんが代弁してくれたことを非常に嬉しく感じた。

同行のおじさんの「なんだ?やったるぜ」といった風の戦闘的な性格に
「まずは何でも勝ち負けとして捉える考えを改めた方がいい」とおじいさんからアドバイス。
これにも、かなり頷いてしまった(笑)

私がひとりになった時、托鉢(駅で器を地面においたお坊さんを見たことありませんか?アレです。)
をしに門外へ出ていた修行僧のお兄さんがベンチまでやって来て
私に話し掛けてきた。
「いつから歩いてるんですか?」
「まだ昨日始めたばかりなんです。なのにすぐマメを作っちゃって。」と言うと
「それじゃあ、あなたが無事に満願できるようにいいものを差し上げましょう。
ちょっと荷物を取りに行ってきますね。」
そして何か額縁のようなものを持って戻ってきた。
ボロボロ(失礼!)のさんや袋にはそんなのが入ってたんだ〜と感心していると
立派な額縁から一枚の絵を取り出した。
「僕の友人が絵描きでして。ずっと描け描けと言って、
こないだようやく描いてくれた御不動様の絵なんです。あなたに差し上げます。」
「そ、そんな大事なものは頂けません!」
「いえ、あなたにぜひ貰って欲しいのです。」
なんだか自分に不相応な気がした。でも修行僧のお兄さんのエネルギーを
御裾分けしてもらう意味でもありがたく頂戴した。
その絵は迫力満点でパワーに満ち溢れている気がした。
だって家に持ち帰って皆に見せると「すごく怖い。呪われそう」なんて言ってるもの(笑)
でもね。これがきっと私をずっと見守ってくれると思うんだ。
その絵はガイドブックに挟んで折れないようザックに大事にしまいこんだ。
さぁ、また元気に歩き出そう。

次の10番札所まで3.8km。
車も通らない、広く平坦な一本道がまっすぐ引かれている。
周りには牛。田んぼ。畑。青い空に白い雲。
8〜9番札所への道と同じく牧歌的な道が続く。これらの道が一番記憶に残っている。
こういう風景の中にいると「あぁ。来て良かった」としみじみ思う。
そして私はこんな時間を持てて幸せだなぁって。

9-10

しかしこの幸せな気分もつかの間だった。
「10番札所 あと600m」の看板を見て右折。小道に入る。
すると何だか見覚えの有るような坂道なのだ。
どこだろう、どこだろ・・・あ!丹沢の大山の参道だ!
両脇にお土産屋・・・ではないけれど食堂や民宿が所狭しと並んでいる。
階段ではないけれど、ひたすら上り坂。

坂道がようやく終わったらと思いきや今度は階段地獄が待っていた。
なになに、333段!?
階段前にある休憩所のおばさんに荷物を見ててもらい
必要最低限の荷物をもって階段地獄へ挑む。

途中、おじさんに先に行ってもらい後ろから来たおばちゃんと一緒に歩く。
年配のおばちゃんはひとりで車で回っているらしい。
「一度バスツアーでお遍路したんだけどね。その時にひとりで回ってる人を見かけて。
自由に動けるからいいなって思ってたの。だからひとりでお遍路始めちゃったのよ。」
なるほど。バスツアーは聞くところによると人数が人数なので
添乗員さんが全員分一括で納経してしまうそうな。
それじゃお遍路してる気分が味わえないよね。

PM0:30 10番札所「切幡寺」 到着。

ここ切幡寺は山の上だけあって眺めがスバラシイ。絶景だね。

10番札所

寺の反対側。ご住職のお住まいでは・・・(笑)

10番札所 犬

ムフフ。ナイスショット♪

--------こぼれ話--------------------------------------------------------------
実はここに着いた時かなり私の足も頭も限界がきていてフラフラしていた。
暑さで熱中症になりそうで濡れたタオルを頭にかけてしばらくぼけーっとしてたんだけど
そのまんま納経所へ歩いてく時、目の前に電話ボックスがあるのに気づかず
思いっきり体当たりしてしまったのだ。
体当たり・・・というよりむしろ頭つきに近かったかも。
それから東京に帰ってからもしばらく額の辺りが
ほのかに腫れていたことはトップシークレットである。
---------------------------------------------------------------------------------

参拝を済ませ、下の参道にあるうどん屋さんで今日初めてのゴハンを頂いてから
今日のメインイベント約10kmの道のりへ挑戦。

今まではお寺が密集していた方だったので楽な方だった。
これからは一寺の距離が87kmというのも待ち構えている訳だから
それへの挑戦、根性試しの道のりでもあると言えよう。

しかし条件は最悪である。まずピーカン照り。
TVも新聞もないので具体的な数値はわからないけれど
自分の中では気温40度いや、それ以上に感じた。
だってどんどん汗が吹き出てくるし、びしょびしょに濡らしておいたタオルがどんどん乾くし。
しかも一日の中で一番辛いPM2:00台・・・。
そんな炎天下の中、日陰のまったくない道を歩くのだ。

半分記憶を失いつつも写真で見て憧れていた「吉野川の潜水橋」まで目指す。
ようやくここまで歩いてきてすごく感動。
川に出ると若干風があって涼しいし、やはり水って見てると落ち着く。

10-11吉野川

川を超え、11番札所ももうすぐという時。
私は兼ねてから思っていたことを口にした。
「おじさん、先に行って下さい。私もう限界です」
「そうか、がんばるんだぞ」
ようやくひとりになれた。その安堵感があった。
実はだんだん関西人特有の性格・・・(ああ、ごめんなさい。こんな言い方で)に
ちょっとまいっていたのだ。
なんでも損得勘定で物事を考える所とか利己的な所とか
人のことをどうのこうの言える立場でないのは十分承知だけど
どうしても彼とこの先ずっと歩くことはもう無理だったのだ。

ひとりになって仕切りなおし。
川島町のコンビニで飲物を買って、駐車場でへたり込み30分程休憩をする。
それからまた歩き出す。とにかく歩くしかないのだ。前へ。

交通量の多い国道から細い住宅地への道。ここがお遍路道のようだ。
昔ながらの家並、住宅地ならではの静けさにホッとしながら歩く。
もうすっかり日は傾き始め、5時までの納経に間に合うか微妙なところ。

10-11manhole

すると遠くでひとりのおばあさんがこっちを見ている。
おばあさんの目の前に辿り着くと
「お遍路さんでしょう?これ食べなさい」
と、自家製のプチトマトと一口アイスをいくつか下さった。

実は2日間歩いていてこの時が一番辛くて辛くてたまらなかったのだ。
早く前に進みたいのに、足は言うこと聞いてくれないし
足の付け根にあるマメをかばって歩いていたらかかと部分がマメになってしまうし。
そうやって変な歩き方をしたせいで体中がもうボロボロで。痛くない所の方が少なかった。

「今自転車で出かけようとしてたんだけどね。あなたが歩いてくるのが見えたのよ。
女の子の歩き遍路なんて珍しいなぁ、しかも一人でしょう?
だから何か差し入れしてあげようと思って一旦引き返して来たのよ」

そんな中でのこの親切で私の気持ちが爆発してしまった。
とにかく涙が出て出て仕方ないのだ。
嬉しくて涙が止まらない。
今までにもそういう体験はあるけれど、こんな子供のように号泣してしまう事は無かった。
人の優しさで自分がどんどん素直になって。
涙を流すことによって自分がどんどん浄化されてくカンジだった。

おばあさんと別れてからもずっと涙は止まらなかった。
「うぅ〜〜」と声を出し泣きながら歩き続けた。

昔からよく人をつっぱねて、意地張って、決して本音を見せることは無かった。
心の内を知られる=弱みを見せるのが嫌だった。
でも。私はひとりで生きているんじゃない。
いつもこうして誰かに支えられて生きてきていたんだ。
そんな当たり前の気持ち。「感謝」という当たり前の気持ちを今更ながら再確認した。
今もこの時の気持ちは忘れない。きっと一生忘れないと思う。

そうしてようやく藤井寺が見えてきた。
しかし。到着時刻 PM5:05・・・。
納経所に明かりはついているものの、カーテンが閉じられていた。
ここで「オマケでいいでしょー?」なんて言うこともできないし
どうせ明日12番札所へ行くこと出来ないのだから
(ここは登山になるので今現状の私の体調では無理と判断したのだ)
のんびり明日まで待とう、と思った。

となると宿探しである。
一応、お寺の前には民宿もあるのだけど泊まったとしても
ゴハン食べる気力ゼロだし、とにかくひとりで静かに寝たいだけだった。
なので屋根があって横になれる場所を探す。

11番札所トイレ

すると藤井寺の大きい駐車場の公衆トイレが目に入った。
ここは電気もあるし、水もあるし、トイレももちろんある。
ちょうどいいや。トイレ前のベンチで寝よう・・・ん?
バリアフリー用の大きい個室がある!!!
中を覗いてみるとあまり使われていないらしく床は乾いているしキレイ。
鍵もかかる・・・今夜のお宿はここに決定♪
自分のアイデアに陶酔するようにマットを急いで敷いて荷物を置く。
そうしていると向こうからおじさんがやってきた。
怪しい人物と思われても何なので、一応ご挨拶。
すると「本当にここで寝るの?」と驚かれてしまった・・・。
私としてはかなりいいアイデアなんだけど。
この場所のメリットを話すとおじさんも納得。

するとおもむろに携帯を取りだし、どこかへ電話をし始めた。
「あの、私ね。町役場に勤めてる者なんですけど。
今日ちょうどこの近くのキャンプ場で子ども会がキャンプをしているから
カレーライス食べに行きませんか?」
ものすごくありがたいお誘い・・・だったけれど私の疲労は限界以上に達していて
人と話すのもおっくうだったし(民宿に泊まらない理由にこれもあった)
今は食欲よりもとにかく靴を脱ぎたい、横になりたい、眠りたいだけだった。

なので丁重にお断りしていたのだけれど、そのおじさんは
「私、原付で来てるんで送ってあげられないんです。
今、迎えをよこしますから、ちょっと待ってて下さい」(ブ〜ン←原付の走り去る音)
あ・・・。なんてマイペースな方なんだろう(笑)
とりあえずトイレ前のベンチで座っていたら、本当に迎えの軽トラがやってきた!!
そして私は半ば拉致されるようにキャンプ場へ行くことになったのである(笑)

キャンプお接待

キャンプ場では子供達は食事を済ませ、大人達は談笑をしていた。
そこに突然連れてこられ、訳もわからずキョロキョロしてると
遠くから「早くこっちきいー。カレーあるでー」との声。
お茶をたくさん頂いて、カレーも何とかがんばって食べた。
そして私はもうマイホームであるトイレに帰ろうと思ったのだけど・・・。
「大人が泊まる建物は広いし、布団もお風呂もあるから泊まっていき」
「これからキャンプファイヤーもやるから見てき」
「ここのキャンプファイヤーは見る価値あるぞ。普通のと全然違うんだから」
と、大勢から畳み掛けるように説得をされ、いつの間に荷物は事務所の建物へ持ってかれた。
(徳島の人ってすごいなぁ〜〜〜 ^^;)なんて心の中で思いながら
とりあえず荷物も見張っていなくて済むし
食べ物・飲物の心配をしないだけでかなり気が楽になっていた。

そして辺りが夕闇に包まれて。キャンプファイヤーが始まった。
小学校以来だな、こんなの・・・。と思いながら一緒に歌を歌ったり
踊ったりして、すごく楽しいひとときを過ごした。
ちなみに。踊りはスタッフの人達にこれまた強引に腕を引っ張られ
真ん中に出されたので仕方なくやったのだ・・・。ああ、恥ずかし。
そして自分の中で一番の思い出だったのは
人生で初めて「蛍」を見たこと!!!!
すごく感激!涙が出そうになった。

「キャンプファイヤーお接待なんて滅多に経験できないぞ」と
おじさんが言っていたようにこんな体験、出来ないよね。普通。
こんなにまで良くして下さって、本当四国ってすごい。

キャンプファイヤー後はお風呂を頂き、宴会までも参加させてもらっちゃった。
お兄さんが買出しに行く時私の顔を見て
「何飲みますか?ジュース?お酒?・・・飲めるやろ(笑)」と
私に間髪入れさせないとことか、強引だよな。
しかし四国独特の暖かさがあって、この関西弁は好きだなーと思った。

お酒もたくさん頂いた午前1時。
眠い眠いと思っていたのに、なぜか目が覚めてしまっていた。
ひとりになりたいって思っていたのに、なぜか皆ともっと話したいと思っていた。
せっかくこういう出会いがあったのだから、大事にしたいと思っていた。

玄関前でKさんと話していると、先程買出しに行ってくれたHさんが来た。
彼はキャンプファイヤーのまとめ役をしていてNHKの体操のお兄さんみたい。
キャンプファイヤーの感想とか話していると
彼も実はここの子ども会(正式にはジュニアリーダー)の出身で
大人になってもこうやって参加しに来ているのだそう。
私はガールスカウトとかそういう地域の運動に全く参加してこなかったから
いいな、うらやましいなぁ、と思った。
大人になって今度は指導者として戻ってくるなんてステキだなぁ。

すると突然、Hさんが「足見せてみろ」
うぅっ・・・。恐る恐る見せると
「限界とっくに超えてるだろ」「よくこんなんで歩けたな」
「マッサージしてやるから」「痛くてもガマンしろよ」

・・・ええと。私のリアクションはご想像の通りです。
悶えちゃって悶えちゃって。もう大変です。

「足の裏がまずダメになって、それをかばう為に足首、太もも、腰そして肩。
もう全部イってるぞ」

ああ・・・はい。その通りなんです。押される所、全てが痛いんです!
その後1時間以上かけて彼は丁寧にマッサージしてくれました。
しかも足だけでなく全身。いやー、すごく気持ちよかった!!
そしてそのまま爆睡。翌朝の足取りが軽かったのは言うまでもありません。

3日目の朝はごはんとお味噌汁を頂いて。
それからIさんに車で藤井寺まで送って頂いて。
町ご自慢の温泉にも連れてってもらい昼食をご馳走になりました。(生ビも・・・)

鴨の湯

それからお土産の無農薬トマトを買って頂き、町内の観光に連れてってもらい
私の「登山に行くと必ずおいしい湧き水をお土産に持って帰るんです」との一言で
湧き水の出る場所へ連れてってくれて空のペットボトルまで用意して下さり
藤井寺のご住職と会わせて頂いたり、しまいには徳島空港までも送って頂いたのです。

もうね、感謝の気持ちがここに書ききれないくらい。
すごいよね。初対面の人にこんなにまで出来るんだよ?
いくら四国の人達はお接待が普通の生活の光景だとしてもさ。
すごくないか??
それともこれが、四国がスタンダードなのであって、東京が世知辛いだけなのか?
いや、もしかしたら自分がそういう嫌な所ばかり見ていただけなのかもしれないな。
世界は悲しいニュースだらけだけど、まだまだ捨てたもんじゃないよ、この世の中!
自分もこういう優しさをお返しできるような人間になりたい。
強くそう思った。
今回の旅は辛くてもいろんな事を発見、考えることができるいい機会だった。
やっぱりお遍路やってみて正解だったな。


そして今日。また私は四国へ旅立つ。
過去の自分を見つめ、未来の自分を描き、自分らしさを取り戻す旅。

さぁ。また一歩 前へ。
posted by umi at 03:23| Comment(4) | TrackBack(1) | 私のあしあと。 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
お昼休みに一気読みさせてもらいましたよ!
自分も四国には10回ほど行きましたが暖かい人が多いですよね。
お接待の心のせいなのでしょうかねえ。大体の人が親切にしてくれます。昔の日本人の心が残っているような気がします。(特におじいちゃんおばあちゃんは親切だった) 自分もその心をなくさないようにしなければ。

天気が心配だけど気をつけていってらっしゃい(´・ω・`)ノシ
Posted by nicenature at 2004年09月16日 12:58
umiさん、素敵な経験をしてるんですね!羨ましい。
私は四国地方に行ったことがないのですが、どうしても行ってみたくなりました。プチトマトと一口アイス、また素敵な出会いがあるといいですね。
無理せず気をつけて行ってらっしゃーい!
Posted by masae at 2004年09月16日 21:31
四国って…いいところ…。これを読んで、強くそう認識しました。暑いのは苦手だけど行ってみたくなりました。人々の優しさや、旅の空気感がヒシヒシと伝わってきます。我が北海道は、よそ者が集まって開拓しただけに、よそ者を簡単に受け入れる気質はあるものの、同時に必要以上に干渉しない気質も持ち合わせているらしく、ある意味では田舎な割りにクールです(まあ、札幌だけかも知れませんが)。四国のこの逸話は、驚きと共に愛おしさを感じます。貴重な風土だ…。これからも、何かに侵食される事なく、このままであって欲しいです。でも、umiさんの人徳もありますよ、きっと。オーラとか(?)。なんて、固めに書いてみましたが、今日も実はデロデロに飲んで来てます。フラフラ泥酔です。これから寝ますが、四国の夢を見たいなあ…。(長いコメント失礼)
※追伸:今日は、この長いコメントでパワーを使い果たしたので、自分のブログの更新はナシです。
Posted by オータ at 2004年09月18日 01:04
>nicenatureさん
あらら。一気読みしてしまいましたか!
疲れ目になりませんでしたか?
四国は人が良すぎます。
小学生も私にむかって「おはようございます」って
キチンと挨拶してくれるんですよ。
情操教育の場として四国は断然オススメできますね。

秋で涼しい四国をイメージしてましたが
かなり予想を裏切られました。
お天気はほぼ毎日、酷暑でして(笑)
それと午後は毎日のように通り雨でしたね。
レインジャケットが活躍しましたよ。

>masaeさん
今回はすだちと栗、ヤクルト、お土産用のワイン、
お菓子、たこ焼き、お弁当、車の移動・・・
などなど多くのお接待を頂きました。
またまた号泣の毎日でしたよー。

>オータさん
泥酔なのにこんなステキなコメントどうもありがとう!
私も四国はずっとこのままでいて欲しいと勝手ながら思います。
癒されるんですよ。四国の空や山や川を見ているとね。
都会の汚れを洗い流してくれる感じです。
そうして自然と顔が優しくなってほころんできますよ。
Posted by umi at 2004年09月22日 01:21
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Excerpt: この続き。 今回は吉野川の北側を終了し、十番と十一番の間で南側に渡りました。 六番安楽寺からスタート。秋晴れで気分の良い朝です。 六番安楽寺から七番十楽寺までは近いです。そんな途中に「熊野神..
Weblog: 鉄道おたく旅
Tracked: 2006-05-21 14:30
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